安心のお寺づくりとは、生活者視点に立つこと

井出 悦郎

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■ 生活者視点に立つことが、これからの時代のお寺づくり
「生活者視点」を持つということ。
この視点を持つことは、これからのお寺づくりにおいて不可欠だと、私たちお寺の未来は考えています。
檀家という言葉に象徴されるように、人とお寺の関係は、長らく制度的なニュアンスが強い呼称で呼ばれてきました。しかし、単身世帯の増加と人口減少、それに伴う伝統的な仏事の衰退等、お寺を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。今後は檀家という意識はさらに希薄化し、お寺と人々の関係は先祖代々という論理から解き放たれていくことは間違いありません。そのような時代にお寺が対処していくには、人々との新たな関係を築く必要があります。

新たな関係を取り結ぶには、相手をよく知る必要があります。一人ひとりの人間は、檀信徒というラベル以前に、喜怒哀楽を味わいながら毎日の生活を営み、それぞれの人生をまっとうしていこうとする一人の生活者です。
生活者たる一人ひとりをよく知ること。そこから始めなければ、各お寺のご本尊である仏さまの願いに人々の思いは重ならず、これからの時代のお寺と人の関係は築かれません。
特にインターネットが発達した現代は、生活者が主体的かつ能動的に様々なものを選ぶ時代に変化しています。お寺が地域社会で果たす役割も昔に比べて縮小している中、お寺との関係をどう前向きに選び取ってもらえるかを、生活者視点に立って考え、行動に移していく必要があります。
■ 生活者視点に立脚して創られた「安心のお寺10ヶ条」
しかし、生活者視点に立つと言っても、どうすればよいのでしょうか?
まずは檀信徒の声に耳を傾けていくということが大切ですが、闇雲に聞いても効果はありません。生活者の声という、情報の森に飛び込んでいくには、羅針盤となる確固たる軸が必要です。軸なくしては、情報の森の中に迷いこむことになり、良きお寺づくりにつながる光とは出会えません。
お寺が生活者とどう向き合うか。
これは私たちお寺の未来にとっても長い間の命題でした。その命題に向き合うために、私たちが編み出した考え方が「安心のお寺10ヶ条」です。2016年7月に公開した『まいてら』も、「安心のお寺10ヶ条」を根底の考え方に置いています。
「安心のお寺10ヶ条」は次のような要素から見られる、良きお寺のあり方を総合的に勘案して具体化したものです。

  • 全国で200ヶ寺強のお寺で行なった、お寺360度診断®における、約3,000名にのぼる生活者(檀信徒・地域住民)の声に基づいて抽出された、人々が願う良きお寺のあり方
  • 全国約500ヶ寺にのぼる寺業計画書®から見える、良きお寺のあり方
  • 世間が高く評価するお寺の活動
  • お寺の未来の社員が様々な寺院を訪問する際、良きお寺と実感する際の素朴な感覚

このような様々な要素が勘案されて、「安心のお寺10ヶ条」は出来上がっています。これからも時代や生活者の変化に合わせて「安心のお寺10ヶ条」は進化し、これで完成ということはないでしょうが、現時点において生活者視点に立ったお寺づくりを進めるためには参考になるものだと思います。
■ 「安心のお寺診断シート」でお寺の強みに気づき、強みをさらに伸ばすお寺づくりにつなげる
そして、私たちは「安心のお寺10ヶ条」の考え方に基づき、約100項目の視点が盛り込まれた「安心のお寺診断シート」も合わせて開発しました。
【安心のお寺診断シート(一部抜粋)】
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例えば、「安心のお寺診断シート」の「第1条:確固な理念・方針」における、視点の一部をご紹介します。

  • ご本尊(仏さま)の願いを、現代の文脈に照らして、適切に翻訳できている
  • お寺が長年歩んできた縁起・寺史が明確に整備され、その意味合いが咀嚼されている
  • 寺業計画(使命・ビジョン・行動計画など)の策定にあたり、受け手(檀信徒や地域住民)の声や期待を、真摯に傾聴している
  • ご本尊の願いやお寺の縁起、受け手の声をふまえ、社会におけるお寺の存在意義を示した使命が具体化している

(※第1条の視点は他にも複数あります)
「安心のお寺診断シート」は、約100項目の視点を全て満たす必要があるという考え方ではありません。全てのお寺が100点満点を目指すべきという、金太郎飴のようなお寺づくりを目指すつもりは私たちにはありません。
「安心のお寺診断シート」で大切にしていることは、様々な項目の中でどの視点がお寺の特長として際立ってくるかという点です。つまり、特長が多く見られる部分はお寺としての強みである可能性があり、その強みをさらに伸ばしていくことで、より良いお寺づくりにつながる一助になればという考え方です。
「べき論」一辺倒のお寺づくりを進めても、そこにはやらされ感ばかりが生まれ、ワクワクするお寺づくりにはつながりません。
お寺を取り巻く環境が厳しくなる中、お寺を次世代につなげるためには当然「べき論」にも向き合っていく必要がありますが、「べき論」の罠におちいらずに、自坊の強みである得意分野をさらに伸ばしたり、「そもそもこういうお寺を目指したい!」という内側から湧いてくる思いに根ざしたお寺づくりを進めるほうがワクワクしませんか?そして、長期視点で良きお寺づくりにつながる気がしませんか?
そんなワクワクするお寺づくりを心から応援し、次代に多くの良きお寺をつないでいくために、「安心のお寺10ヶ条」と、それに基づく「安心のお寺診断シート」を、これからも私たちお寺の未来は磨き続けていきます。


【告知】
「ワークショップ:『安心のお寺』を考える」開催のご案内

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このたび、一般社団法人お寺の未来では「ワークショップ:『安心のお寺』を考える」を開催します。
昨年7月、お寺さがしポータルサイト『まいてら』開設にあわせ、お寺の未来は生活者視点をふまえ、「安心のお寺10ヶ条」を掲げました。 開設から約8か月が経過し、『まいてら』に参加されるご寺院も着実に増え、お申込みが50ヶ寺に迫ってまいりました。

『まいてら』にご登録いただくご寺院が着実に増えていく中、生活者視点もふまえた 「安心のお寺」という考え方を、お寺づくりに積極的に活かしていただきたいと願い、 「安心のお寺」という考え方について、まいてら登録寺院にとどまらず、『まいてら』に ご興味をお持ちの多くのご寺院と対話する場を設けることにしました。
お寺自身が積極的に「安心のお寺」のあり方を考え、実行に移していく姿そのものが、全国の生活者にとっても安心感を醸成することにつながるものと思います。
ワークショップでは、「安心のお寺チェックリスト」を活用し、さらに伸ばす自坊の強みを 明らかにし、よりたしかな自坊の将来像を検討する時間も設けています。
ぜひ、この機会に、「安心のお寺」という考えをふまえた自坊の将来像についてご検討を深めていただければ幸いです。
【タイトル】
ワークショップ:『安心のお寺』を考える
【WSの目的】
・「安心のお寺10ヶ条」を素材に、「安心のお寺」とは何かについて検討する
※参加者の声に基づいて、「安心のお寺10ヶ条」の中身を磨き上げていくことも予定しています
【WSの流れ(予定)】
・生活者の声に基づく、生活者が考える「安心のお寺」の考え方共有
・ワークショップ:「安心のお寺10ヶ条」に関する意見交換
・ワークショップ:「安心のお寺チェックリスト」を活用した自坊の強みの発見&将来像検討
・『まいてら』の将来構想について
【時間】
13時 – 17時30分 ※終了後、懇親会があります
【日時・場所】

日付時間場所定員
4/19(水)13時-17時30分妙慶院 (広島市中区)25名
4/20(木)13時-17時30分宝林山養行寺 (福岡市博多区)25名
5/11(木)13時-17時30分賢隆山久遠寺 (名古屋市中区)25名
5/12(金)13時-17時30分應典院 (大阪市天王寺区)25名
5/17(水)13時-17時30分梅上山光明寺 (東京都港区)25名
※東京会場は諸事情により、当初予定していた4/14(金)から5/17(水)に変更となりました。
【参加費(税別)】
3,000円 ※まいてら登録寺院は無料
【参加条件】
住職・副住職、寺族をはじめ、お寺の運営に責任のある方
【備考】
・本ワークショップの実施状況は、まいてら新聞上で時折記事として公開されていく予定です
・各会場ともに駐車場はご利用いただけません。近隣のコインパーキングか、公共の交通機関でお越しください
・大阪会場となる應典院では当日に開催されている別イベントの音が影響する可能性があります。予めご了承ください
【申込み方法】
下記のボタンより、申込みフォームへお進みください

井出 悦郎

(一社)お寺の未来 代表理事。東京大学文学部卒。人間形成に資する思想・哲学に関心があり、大学では中国哲学を専攻。銀行、ITベンチャー、経営コンサルティングを経て、「これからの人づくりのヒント」と直感した仏教との出会いを機縁に、平成24年に(一社)お寺の未来を創業

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